ウェス・ボーランド
本名:Wesly Louden Borland
1975年2月7日
バージニア州リッチモンド
リンプ・ビズキット/ブラック・ライト・バーンズ/ビッグダムフェイス/マリリン・マンソン…more
今回のギターヒーローは奇怪千万なギタリスト「ウェス・ボーランド」です。
代表的な在籍バンドとしてはリンプ・ビズキットが有名なウェス・ボーランドは、奇抜な衣装にメイク。そして型破りなギターサウンドを生み出し、数々のバンドに影響を与えてきた絶大なインパクトを誇るギタリストです。
【画像引用元:https://killyourstereo.com/news/limp-bizkit-to-make-a-new-album-next-year/fnw8kJOSlZQ/05-04-23】
失望から生まれたもの
ナッシュビルで幼少期を過ごしていたウェスは、音楽に関心が強く特にドラムに興味を持ち始めていました。ですが、室内での打楽器練習を認めてもらえず渋々ギターを習うようになりました。しかし、ギター講師が年配者だったこともあり音楽の指向性が合わず、基本練習だけを学び独学で学ぶようになります。
フロリダ州に転居することとなりますが、またもや地域の音楽シーンに合わず、独学を続けます。芸術学校に通うこととなったボーランドは、主に特殊効果や立体芸術などのアートを専攻しますが、その傍らジャズ専門のギター講師と出会いギターレッスンを受けていました。地域の音楽に合わず失望していたウェスは、「パブリック・エネミー」と「アンスラックス」の共作「Bring the Noise」に触発されヒップホップとメタルに関心を抱き、独り作曲などを行っていました。
リンプ・ビズキット
ウェスが20歳の頃にフロリダ州ジャクソンビルにてヴォーカリストのフレッド・ダースト、ベースのサム・リヴァースを中心に「Limp Bizkit」が結成されます。
【画像引用元:https://lmusic.tokyo/news/171594】
ニューメタル・ヒップホップの先駆者「KoЯn(コーン)」の弟分的なバンドとして注目され、フレッドの甲高い声とヒップホップ色が強いメロディー、そしてウェスのヘヴィで変則的かつ印象的なリフが人気となり、1997年のデビューアルバム「スリー・ダラー・ビル、ヤ・オール$」は全米で200万枚を超える大ヒットとなりました。
1999年2作目のアルバム「シグニフィカント・アザー」も全米700万枚を超えるセールスとなり、日本でもヒップホップ、ミクスチャーロックが流行していたこともあり、Limp Bizkitの人気は徐々に世界へと広がり始めました。
2000年にはLim Bizkit史上最高のセールスとなった「チョコレート・スターフィッシュ・アンド・ザ・ホットドッグ・フレイヴァード・ウォーター」が1200万枚を記録。アルバムには映画で使用された曲や話題性の多い曲が収録され、フレッドが監督しているMVも評価が高く数々の賞を受賞しています。
その後、ウェスの脱退や復帰、メンバーの入れ替わり、その他ゴシップが多くなにかと注目され、2023年現在でもライブを続けています。
ギタープレイ
ウェスのギタープレイはカッティングプレイが逸材です。
もちろんヘヴィな歪みに印象的なリフも有名ですが、アクロバティックなライブパフォーマンスからは想像できないほど繊細なクリーン音から繰り出す丁寧なアルペジオとカッティングは、メタル系ギタリストの中でも群を抜いています。また、アナログとデジタルを巧みに操り、そのうえにギターテクニックをプラスして異次元なサウンドを生み出します。
メタル、パンク、ジャズ、オルタナティブなど様々なジャンルを合わせたリフが特徴的です。
【画像引用元:https://www.ultimate-guitar.com/articles/features/in-depth_analysis_of_guitars_amps_and_effects_used_by_limp_bizkits_wes_borland-107042】
ギター選びは逸材
ウェスが使用しているギターは時期によって全く違います。
デビュー当時はIbanez製のRGシリーズを使用していましたが、その後はAXシリーズ、4弦ギター、P.R.S、YAMAHA、Jacksonと変転しています。
Ibanez RG7CST
7弦仕様となりチューニングは変則的で1、2弦が同音チューニング。
様々なチューニングが使われていましたが、ライブでの弾き方を見ていると「C# F# B E G# C# C#」じゃないかな?と思われます。
Ibanez AXシリーズ4弦仕様
こちらも変則チューニングでバレーコードがメインとなっているのでドロップ系チューニングと思われます。
P.R.Sシリーズ
ダウンチューニングとの相性が良く、独特のアタック音を好んでいたらしく、セットネックのCustomではなく、ボルトオンタイプを主に好んでいたようです。他にもバリトンギターを使用しておりヘヴィなサウンドやLimp Bizkit以外でのバンドやオリエンタルな楽曲で使用していました。
【画像引用元:https://www.yamaha.com/allaccess/artists/issue12-borland_wes.asp?issue=issue12】
YAMAHA YAMAHACV820WB
2008年頃辺りから使用していたウェスのシグネイチャーモデル。ホロウボディにロック式のアーム、変わったシェイプ、コントロールスイッチの位置などウェスのセンスが光るモデルとなっており、Lim Bizkitを一時離れていた頃なのでウェス本人の音楽性が具現化されやすいギターのようです。YAMAHAとはエンドース契約をしていたためこの頃はYAMAHA製のSGなどもステージで使用していました。
Jackson
2011年頃からJacksonを使用しています。2011~2012年は様々なWarriorシリーズがメイン。
2013年にはKing V KVレフティを右利き用にカスタムしてあります。コントロール部も移設してあり、フロントピックアップは取り外し、リアにはSeymour Duncan製のSH-8bインベーダーが取り付けてあります。
2013年以降はJacksonのV系シェイプを使用しており、カラーリングや、カスタムを施しているようです。
CharvelのSan Dimasを使用している場合もありますがJackson kingV同様にフロントのピックアップは取り外されています。
サウンドアート
ミクスチャーロックサウンドを作るウェスの要は「エフェクター群」です。
足元に並ぶエフェクターはコンパクトからマルチと多用しておりボードの長さは1.3m程あり、さらに併用しているマルチエフェクター、デスク状のスタンドには効果音などで使用されるルーパーや、ディレイ、レコーダー、ミキサーなどが所狭しと並んでいます。
ウェスは空間系を緻密に組み込んで使用しており、BOSSのDDシリーズをDD-3、DD-5、DD-8など4つ配置。Strymon Elcapistanのテープエコー、Ibanez のCF-7コーラスなども組み合わせ独特な雰囲気を持つクリーンサウンドに仕上げています。。
【画像引用元:https://line6.jp/helix/helix-lt.html】
Line6 Helixも併用しており、ソロ活動ではアンプは使用せずHelixのみで音作りをしたそうです。
歪みは基本的にアンプの音のみで作られており、現在はEVH 5150Ⅲですが過去にはMesa Boogie、Diezel、Bogner 、Orangeなどのハイゲイン系を使用していました。1999年頃から流行したMesa Boogie×P.R.Sの組み合わせを広めたのはウェスとも言われています。
また、ウェスがデビュー以前から長らく使用しているのが名器ジャズコーラス/JC-120です。主にクリーン時に使用されています。ディレイにコーラスとエフェクトをかけヘヴィサウンドの中でもひときわ目立つ澄んだキレイなクリーントーンを生み出しています。ライブステージでも必ずキャビの上段に配置されています。
アーティスティック=奇怪?
ウェスと言えば「メイク」。Limp Bizkitとしてデビュー間もなくウェスは奇抜なメイクを始めました。当初は黒目だけのコンタクトに、半裸くらいだったのですが、徐々にエスカレートしていき白塗りに、ボディメイク、マスクと過激になっていき一人ハロウィン状態です。
見慣れてくるとLimp Bizkitのライブステージに居ないとしまりがないとういか寂しいというのか…MV、ライブでも奇抜なメイクと衣装ですので一度は見てみて下さい。動き回るギタリストのライブ衣装とは思えませんから。
体やギター、キャビネットにペイント、CDジャケットのデザインや衣装や小物など自身で制作し芸術アーティストとしての一面も持つウェス。私生活では小動物(特にウサギ)、猫が大好きで来日公演の際にはリハの合間、本番直前でも猫カフェに行くなど動物愛が深くて有名です。
【画像引用元:https://guitar.com/news/music-news/limp-bizkits-wes-borland-has-been-playing-shows-despite-his-broken-hand/】
↑装飾されたマイクスタンドにペイントされたギターと猫柄のストラップ
普遍×昇華=ウェス・ボーランド
Limp Bizkitのギタリストとして未だ活躍するウェスは、年を追うごとにウェスらしさを発揮されている気がします。自分の中の揺るぎない精神を保ちつつ、常に新しいアートを生み出すポテンシャルはまだまだ潜在しています。
2023年11月にはLimp Bizkit東京単独公演も決定し、今後の奇抜なメイクも期待ですが、ギターサウンドも期待大です。