スコット・イアン
本名:Scott Ian Rosenfeld
1963年12月31日生れ
ニューヨーク州出身
ANTHRAX、Motor Sister、Mr.Bungle
【画像引用元:https://loudwire.com/scott-ian-talks-post-911-anthrax-scares-stirring-up-a-media-frenzy-over-his-bands-name/】
今回のギターヒーローは強烈なリズムを刻み込むスコット・イアンです。
スラッシュメタルバンド「アンスラックス」のギタリストであり、アンスラックス創設メンバーです。
【画像引用元:https://rockandblog.net/el-nuevo-album-de-anthrax-sera-mas-rapido-y-guitarrero/】
スラッシュ界の異端児
スラッシュメタル四天王 (メタリカ/メガデス/スレイヤー/アンスラックス)の一角に数えられるアンスラックスの創設者であり、作詞担当及びリズムギターのスコット・イアン。
スキンヘッドに、長い顎ヒゲというメタルというよりハードコアスタイルのようないで立ちだが、スマイルが多く朗らかで陽気な雰囲気を持ち合わせています。
【画像引用元:https://consequence.net/2022/05/scott-ian-2023-new-anthrax-album/】
そして革新的な発想の持ち主であり、メタルの要でもあるギターソロを廃したり、ラップとの融合を試みたりと四天王の中でもかなり異端な発想をもっています。ラップメタルの影響力は強く、Linkin Parkや、Limp Bizkitなどのミクスチャーロックに貢献しています。
イアンの強烈な刻みをみせるリズムギターはスラッシュメタル界にとどまらず、パンクやハードコアにも影響を与えており、Hi-STANDARDの横山健も影響を受けたその一人です。
【画像引用元:https://natalie.mu/music/news/70427】
アンスラックス
1981年にイアンとベースのダン・リルカによって結成されました。
1983年にアルバム「フィストフル・オブ・メタル」でデビューを果たしますが、ボーカル、ベースがメンバーとの確執により脱退します。それからもボーカルや、ドラム、ベースの入れ替わりが激しく、2023年までに20人近く入れ替わっています。イアンの少し荒々しい性格が災いとされていますが、メンバーの演奏技術に対する熱意に温度差があったり、イアンのイメージしている作品が具現化できなかったりと言われていますが真意は謎です。
メンバーチェンジが功をそしているのか、ボーカルの癖に合わせた楽曲の制作で、スラッシュメタルの枠を超えた新しいスタイルを生み出しています。
1991年にはヒップホップグループ「パブリック・エナミー」との共演でヘヴィメタルとヒップホップの融合に挑戦しラップメタルというジャンルを確立させました。
【画像引用元:https://www.loudersound.com/features/the-story-behind-the-song-bring-the-noise-by-anthrax-and-public-enemy】
リズムギター
リズムギターといえばバッキング演奏やリフがメインとなり、リードギターのソロなどを支える二番手的なイメージが多いですが、イアンの高速オルタネイトピッキングはギターソロよりも強烈で大きな印象を与えてくれます。
イアンに影響を与えたほとんどがUKメタルであり、ブラック・サバス、アイアン・メイデン、モーター・ヘッド、ジューダス・プリーストから影響を受けています。そして、高速ピッキングではドイツのメタルバンド「アクセプト」が大きく関わっており、楽曲制作についても影響を受けています。また、リズムギターを追及するうえでは、マルコム・ヤング、ルドルフ・シェンカー、ジョニー・ラモーンらを研究しバンドの中核としてのリズムギターを極めたと語っています。
※ 「ACCEPT/アクセプト」1976年から活動しているジャーマンメタルバンド
リズムギター、セカンドギターは確かにリードギターと比べるとあまり目立たない存在かもしれませんが、バンド音楽を追求すればするほどリズムギターの重要性と奥深さに惹きつけられます。リズムと複雑なリフを安定してこなしているイアンの凄さは知る人ぞ知るといったリズムギターの真髄かもしれません。
【画像引用元:https://www.gearnews.de/anthrax-signature-jackson-x-series-scott-ian-king-v/】
Jackson vs Scott Ian
イアンのギターと言えばJacksonのVシェイプが有名ですが、Jacksonを手にするまで時間がかかりました。1980年代にランディ・ローズがVシェイプ(通称ランディV)を弾いているのを目撃して一目惚れ。当時Jacksonの流通が少なく、高額だったこともありJacksonはイアンにとって憧れの存在でした。イアンは機材などを売って資金を貯めますがそれでも手が届かなかったため、ChavelのStar Bodyを購入します。
アンスラックスとしてデビューを果たしていましたが、未だJacksonを手に入れることができなかったイアンはメッセンジャーの仕事もこなし1983年に資金を貯めようやくJacksonを手に入れることができました。
【画像引用元:https://www.jacksonguitars.jp/blog/2021/12/scott-ian-special-interview-vol1/1367/】
Jackson最初の1本目はローズカスタムショップをオーダーしたものになり、ホワイトに塗装されたランディVシェイプのギターです。1987年頃まではツアーでも使用していましたが、思いの強いギターの為、盗難やアクシデントを避けるため自宅で保管していたようですが、近年はライブでも使用することが多くなってきました。
その後いくつかのJacksonを手にしていた1986年頃、Jacksonからエンドース契約の話が舞い込んできますが、なんと契約を結ぶのは当時アンスラックスのリードギターであるダン・スピッツだけとのことでした。
イアンは「俺はリズムプレイヤーだから断られたんだ!」「マルコム・ヤングは!?トニー・アイオミがコード弾かなくなったらどうなる!?」「リズムギターは重要じゃないのか!?」と激怒したらしいです。
そのタイミングでESPから契約の話があり、イアンは2年ほどESPで制作したギターを使用します。
そして、1990年代知り合いだったギターショップの知人がJacksonに移ったことをきっかけに「我が社は大きな間違いを犯していた!どうか考え直して君とエンドース契約してくれないか」と連絡があり、「もちろん!もう全然怒ってないよ!」と二つ返事でJacksonと和解し、エンドース契約を結びました。
その後イアンはディンキーやソロイスト、ランディVなど多くのJackson製ギターを使用しています。そして近年はギブソンフライングVをアレンジしたシンメトリーなVシェイプの「King V」のシグネイチャーモデルを制作しています。
【画像引用元:https://www.jacksonguitars.jp/gear/electric-guitars/usa-signature-scott-ian-king-vtm-kvt-2848237/3148-7389/】
Jackson USA Scott Ian King V KVT
Jackson USAシリーズのモデルはオールマホガニー材でスルーボディ構造となっています。
ピックアップはSeymour DuncanのSH-1NとSH-4の組み合わせでクリーンかつダーティーなサウンドをコントロールできる1本です。Jackson X シリーズから材質が異なる仕様のシグネイチャーモデルも発売されています。
市販化されていないモデルは多数あり、様々なカラーパターンも所有しています。
King Vは故ロビン・クロスビーのモデルであり、ロビンの愛称がキングだったことからKing Vと名付けられました。
最新のJackson Xシリーズシグネイチャーモデルは親友だった故ダイムバッグ・ダレルへのオマージュを込めた仕様となっています。ストップテールピースがフロイドローズ製のトレモロとなっており、ダイムファンが狂喜するダイムスライムカラー!となっています。
ダイムと言えば青い稲妻のライトニングボルトカラーが有名ですが、グリーンのサンバーストの通称ダイムスライムを選ぶのは抜群のセンスです!
ダレルとは親交が深く現在でもダレルの命日には髭を赤く染めたり、メモリアルイベントにも積極的に参加しています。
親友ダイムバッグ・ダレルと敬愛するロニー・ジェイムス・ディオが描かれたJacksonソロイストを所有しており、度々ライブで使用しています。
秘密は右手と左手
スコットが使用しているアンプはMarshall→Randall→EVHと変わっています。
初期の頃はMarshall JCM800 2203をノーマルで使用し、t.c.electronicのブースター+ディストーションであの強烈なサウンドを作っていました。レコーディングではジュビリーも使用していたそうです。
1990年代後半から2010年代まではRandall製のシグネイチャーモデルUltimate Nullifier Amp Headを使用しています。97年に頃にダイムバッグ・ダレルの自宅で聞いたRandallのストレートなディストーションサウンドに衝撃を受けダレルを通じ、Randallの社員でもありアンスラックスのファンであった技術者とアンプの開発をしました。
Randallが営業をやめてからはEVH5150ⅢS EL34を使用しています。
歪サウンドはアンプのみで作っているため、エフェクター類はクリーン時に使用するディレイ、コーラスのみで、FORTIN製のノイズゲートとバッファー、やONE CONTROLのスイッチャー等を使用しています。ツアー毎に全て変わることが多く、MXR製で揃えたりONE CONTROL、t.c.electronicなどメーカーで揃える傾向があります。
ワウペダルはカークハメットシグネイチャーモデルKH-95を使用しています。
機材のセッティングは非常に奥が深い...
「僕と全く同じギターや機材を使用してもダレルや、ヴァン・ヘイレンは自分の音が出せるんだ。結局は右手と左手次第でサウンドが決まる」
と、スコットは語っています。
たしかにヌーノ・ベッテンコートもヴァン・ヘイレンの機材で弾いてみたけどヴァン・ヘイレンのサウンドにはならなかった言ってましたからね。弾き方や、力加減など微妙なニュアンスでも大きく変わってくるものなんでしょう。
新たなメタルサウンドへ
40周年記念ツアーはコロナ渦や物流問題で中止や延期が相次ぎ、 未だ詳しい振替ツアーの日程が組まれてはいないが、2023年のどこかで新作を発表したいと語っているスコット。ぜひ新しい楽曲を引っ提げて日本公演を行ってほしいものです。メタル四天王、ダレルの親友、メタル界の異端児...なにかいつも期待させてくれるスコットにはメタルの歴史にまだまだ新たな伝説を残していってほしいですね!
【画像引用元:https://guitar.com/news/gear-news/jackson-revamped-scott-ian-signature-guitar/】
ANTHRAX|おすすめアルバム
|Among the living
3作目のスタジオアルバム。ザグザグしたギターサウンドがたまらない!レコーディングエンジニアには名プロデュサー「エディ・クレイマー」が参加しており、80年代メタルでは聴きやすいサウンドになっています。どちらかと言えばさわやかに聴けそうなスラッシュメタル入門にはピッタリな1枚です。
|Attack of the Killer B's
これを聴けばANTHRAXが理解できるといっても過言ではない企画物のアルバム。カバー曲やPublic Enemyとのコラボ曲などスラッシュメタルに固執しない自由に溢れた1枚です!
|State of Euphoria
快活、疾走感溢れるスラッシュ要素を持ちつつ70年代パンクの雰囲気の#10 Finaleや、重厚な出だしでヘヴィに刻むキレのあるキャッチ―な#3 Make Me Laughなどテンションの高い勢いのある楽曲そろいの名盤です!
|Sound of White Noise
vocalジョン・ブッシュ加入後の1作目。自由さを感じるジョンの歌唱表現力が圧倒的でスピード感あふれる楽曲がよりパワーアップしているようなアルバムです。楽曲は方向転換の時期といこともありオルタナ感がありますがANTHRAXでは最高セールスを記録した名盤です!