後世に伝えたいバンド【Dream Theater 中編】

全体的にポートノイに喋らせすぎじゃない?


とも思いましたが立場的に最もメディアへの受け答えが多いのは彼なので必然的にそうなってしまいました。

が、あくまでもバンドの記事なので今後は他メンバーのインタビューでの発言等もしっかり取り入れていきたいと思っています。
マイアングのインタビュー記事?ご冗談を。

また可能な限り作品を深堀り、全曲レビューしていきたい気持ちもありますが、この後控えてる作品を考えるとマジでキリがないので、いくつかに絞って簡易的なアルバム評になっていくと思います、ご了承ください…

挨拶はこれぐらいにして本題に入りましょう。

メンバーの脱退や売上の不振、レーベルからの圧力を押しのけて自らの表現で成功をつかんだDream Theater。
前編の最後に触れましたがここからしばらくは安定した時代を過ごすことになります。
環境はもちろんメンバー間の仲もある程度回復した彼らはいったいどこへ向かうのか。

中編ではこの安定期から再び波乱の渦に飛び込むことになる2002~2010年までを振り返ってみましょう。

○2002【Six Degrees Of Inner Turbulence】

前作【Metropolis Pt. 2: Scenes from a Memory】のツアーは大盛況、ドラムを務めるポートノイはツアー最終日に過労で緊急搬送されるというまさに燃え尽きんばかりの勢いで幕を閉じ、彼らは次回作の制作に取り組み始めます。

この間にペトルーシとポートノイの両名は名手ジョー・サトリアーニ主催のツアー「G3」に参加、新作のレコーディングと並行してのツアーは大変だった事は想像に難くありませんが得るものも多かったようで、この時の刺激と経験が後のソロ作品やフレーズにも影響していきます。

話を新作に戻して、前作の成功もありレーベルにもある程度意見を出せるようになっていた彼ら、コンセプトアルバム同様自らの芸術を形にしようと構想を練っていました。
そう、FIIの時に却下されてしまった2枚組アルバムのリリースをこのタイミングで実現しようと動き始めたのです。

厳密にいうと最初から2枚組として構想していたワケではなく、とあるテーマに則った6曲入りアルバムを想定しており、その最後を飾る20分前後の長尺曲を作るつもりだったそうですが、ペトルーシがルーデスとともに「ここは感動的に」「ここは映画のサントラっぽく壮大に!」と作曲を進めていくにつれ、なんと40分を超えている事に気づきます、遅いよ!

当然CD1枚に収まるわけもなく、かといって削ることもできるはずもなく、残された手段は2枚組しかない!と判断。
レーベルに恐る恐るそのことを伝えると「2枚組?ええやんええやん!」とあっさりOK、前作の成功と評価が効いています。

こうしてメンバーはI&W時と同じスタジオに籠ってレコーディングを開始、6thアルバム「Six Degrees Of Inner Turbulence」(以下6DOIT)が完成します。

人々が患う病や依存症、世界情勢や宗教等、古くから人の営みの障害として立ちはだかるこれらの問題をテーマに繰り広げられていく本作は、4thアルバムでも見受けられた実験的な作風が魅力的な、まさしくプログレッシブ・ロックの傑作。
①はマイク・ポートノイによる「アルコール依存症克服のための12ステップ」という依存症脱却プログラム(通称12 Steps Suite、以下12 Steps)に沿って展開していく、10thアルバムまで続く啓発楽曲。
技術面での話になりますが、この曲のイントロでペトルーシはスウィープで弾けば楽なのにわざわざオルタネイトで弾き切る脳筋プレイを披露、リリースから20年以上経った今でもこのパートをオルタネイトで演奏している猛者はごく稀であり、彼のピッキング精度の高さを裏付けるという意味でも貴重な楽曲です。
実験作の触れ込み通りバリトンギターを駆使した②、非常に不気味なギターソロが印象的な③も印象的ですね、この独特な響きの正体はまず普通にギターソロをRec→その音源を逆再生→逆再生された音源を再度人力で弾いてRec、といった具合にやたら手の込んだ工夫がされています。これはジョージ・ハリスンが実際に試した技法であり、先人へのリスペクトが感じられますね。

前述通り聞きなれない不気味な響きのギターソロ、ゲームのバグ踏んだみたいな居心地の悪さです。


異なるマイナーコードとラブリエの声がより一層悲壮感を漂わせる⑤でDisc1は締めくくられます、バンドのカラーもちゃんと出しつつ楽曲のバラエティには事欠かない見事な仕上がりです。

しかしこのアルバムの一番のハイライトは何といってもDisc2の42分を超えるタイトル曲でしょう。
8部構成の組曲形式となっていますが、あくまでもトータルで一曲といった扱いです。
まさしく映画の幕開けの如く壮大なテーマで始まる42分の旅は、人々が抱える病をモチーフに展開していきます。
導入とフィナーレを除く②~⑥のパートでは
②「About to Crash」:双極性障害
③「War Inside My Head」:PTSD(心的外傷後ストレス障害)
④「The Test That Stumped Them All」:統合失調症
⑤「Goodnight Kiss」:産後鬱
⑥「Solitary Shell」:自閉症スペクトラム
この5つに焦点を当てて物語が展開されていき、⑦~⑧でそれぞれの物語が収束、グランドフィナーレへとつながっていきます。

ファンからの人気が非常に高い⑤、優しい歌声に寄り添うようなギターソロから一転、赤ちゃんの泣き声や点滴機器の作動音など不穏な雰囲気に…


バンド全体の歴史を語る記事なのでこの辺で軽く流しますが、40分超という大作であるにも関わらず、その長さを感じさせないジェットコースターのような緩急と展開に気が付けばあっという間にフィナーレまで突っ走る名曲、この組曲によりDTはさらなる高みに到達したと言えるでしょう。

○2003【Train of Thought】

コンセプトアルバム、2枚組アルバムとキャリアにおける目標を立て続けに達成し、活動は更にも増して安定していたDT。
制作だけではなくツアーの内容にも融通が利くようになり、6DOITツアーでは本筋のライブとは別に、メタリカやアイアン・メイデンなど彼らが影響を受けたアーティストの楽曲をカバーするライブも同時に行っていました。

その時にふと「メタルの曲ってオーディエンスの反応良くね?」と気づいてしまったDTの面々。

書いてて気づいたんですけどこれまでDTの楽曲の中にストレートなヘヴィメタルの楽曲って少なかったよな?となるのも不思議な話です。
いやそりゃあ音とかで見たら間違いなくメタルなんだけど、彼らが築き上げてきたプログレッシブ・メタルってフォーマットを更新し続けてきた結果として、
一口に「メタル」と形容しきれないバンドになっていたんですね、途中AORやったりプログレに振り切ってコンセプトアルバム作ったからじゃね?とか言わない。

また2003年当時はNu-Metalから派生したバンドがブイブイ言わせていた時代、グランジ最盛期同様に様式美的なギターソロがパタッと消え去った時期でもあります、またかよ!
そうと決まれば話は早いのが我らがポートノイ、「界隈が大人しい内にメタルのクラシックを作ったる!行くでぺトちゃん!」とメンバーに発破をかけ、制作に打ち込むことになります。

ここまで記事を読んでいただいてる方は何となくお気づきかと思いますが、DTはアルバムごとに作風を変えてきています。
この7thアルバムも例外ではなく、当時メタル界の流行でもあったD~Cのダウンチューニングを積極的に取り入れていきます。

こうして完成した7thアルバム「Train of Thought」(以下ToT)は今現在でも最もヘヴィでテクニカルなメタル全開アルバムとして君臨しており、ファンからの評価も高い1枚となっております。

前作からの流れを汲み、6thアルバム最終曲のSEからフェードインしてくる①は前述の通り全弦2音下げのC Standardでズンズンと刻む、当時の流行もしっかり取り入れたインパクト強めの掴みで幕を開けます。

ダウンチューニングという新機軸を見せたDTの新たなるアンセム、ペトルーシお得意のオルタネイトぶち込みまくりソロに続くポートノイのドラムソロは持ち味である複雑なリズム解釈と遊び心が詰まった名演。


②も前作から続く取り組みでもある12 Stepsの続編、前作のテーマをなぞりつつ展開し、ラスト1分半ではペトルーシが「みんなが弾かないからその分僕が弾いたよ」とありえん音数のギターソロを披露してます。ちなみにライブ映像ではほとんど手元見てませんでした、見ろよ!
③、④もD~C Standardにダウンチューニングされたリフが主体のメタリックな楽曲が続きますが、いずれも10分を超えで目まぐるしく展開が変わる楽曲構成なのは流石といったところ。
千切れてしまいそうなストリングスの旋律が痛々しい⑤から11分に及ぶ抒情的なインスト⑥はお得意のテクニックと琴線に触れるメロディーが共存した傑作。
余談ですがこの⑥のタイトル「Stream of Consciousness」は4thアルバムの候補だったそうですよ。
⑦はこれまた13分を超える超絶技巧曲、宗教の裏に潜む思惑といったこれまでにないダークなテーマであり、途中のユニゾンパートでは2ndアルバムの「Take the Time」と双璧を成す極悪難易度としてファンの間では有名ですね。

そろそろええ加減にしとけよと言いたくなる超極悪難易度、ライブのラストでこの精度は並みのメンタルと集中力では無理です。
終盤に聞こえてくる荘厳なリパブリック讃歌と訴えるようなラブリエの声がテーマの重さと悲壮感を物語っています。


このアルバムレコーディングの背景ももちろん色濃く、前作6DOITのツアーを共にした大先輩バンドからのありがた~い助言に対してのアンサーソングとして①で不満をぶちまけていたり、④はポートノイと不仲であった義父への怒りを率直に書いたヘイトソングだと公言しています、私情丸出しやないか。
そういったネガティブな出来事がこのアルバムのヘヴィさに繋がっているのだと納得しましょう。

収録曲7曲のうちなんと5曲が10分を超えるアルバムでありながらも、全アルバムでも随一の緩急とヘヴィさから今でも人気の本作。
リリース後も一定以上の評価を得ており、翌年2004年の来日ではキャリア初の武道館公演も開催。
「憧れのビートルズやチープ・トリックと並んだぞ!」と喜びを隠しきれないポートノイの姿が収められたDVDも発売され、このツアーも大盛況のうちに幕を閉じます。

さて皆さんお気づきでしょうか?
6、7thアルバムではある法則に倣って楽曲の構成や配置がなされています。

露骨な書き方なので違和感を覚えた勘の良い方もいらっしゃるでしょう、前作6DOITからDTはアルバムに「とある仕掛け」を隠していたのです。
6thアルバムは6曲収録、7thアルバムは7曲収録というようにナンバリングに沿った収録タイトルに加え、「前作の最終曲の最後の音が本作のイントロに繋がっている」というギミックも共通しています。
こういった遊び心を忍ばせることができるようになったのもまじめに頑張ってきたからなんですね~

そしてこのギミックは単なる遊び心では終わりませんでした。
続く8thアルバムではこの仕掛けとDTの音楽的IQが高次元で組み合わさった新たなる傑作につながるのです。

〇2005【Octavarium】

ツアーを終えて例のごとくレコーディングに臨むDTの面々、歴史の長いバンドあるあるかもしれませんが、レコーディング→ツアーの繰り返しでほとほと過酷な仕事だなと今更になって感じます。
しかしこの時DTは精神的にもまさに絶頂期、武道館公演を成し遂げI&Wの頃より経験を重ね、製作における技術やアイデアは当然のことマインドまで成長した彼らに隙はありません。

DTはこれまで幾度となく繰り返してきた先人たちへのリスペクトと自らの表現、そしてソングライティング能力を絡めた集大成ともいえるアルバムに着手し始めます。
2005年6月7日(日本は1日遅れて6月8日)リリースの8thアルバム「Octavarium」は6DOITより続くジンクス「前作の最終曲の最後の音」から始まります。この場合ToTの最終曲[In the Name of God]の「ファ」ですね。
ちなみにこのファの音をルーデスは鼻で弾いてます、向こうのユーモアは独特です。
収録曲は8thアルバムにして8曲収録、このジンクスは本作にて終わりを迎えます。

何故ここまで細かに説明するのか、それはこのアルバムそのものがとある法則のもと構成、展開していくからです。

とある法則とはズバリ「黄金比」、ジョジョの7部で一気に知名度を得たこの言葉ですがザックリ説明すると人間が美しいと感じる比率のことですね。
1:(1+√5)/21:1.618になります。
また1.2.3.5.8.13.21.34...というように、ひとつ前の数字を足した「フィボナッチ数列」もこの作品には頻出します。
色々言ってますが中の人全然分かってません、私はもう限界です。
とりあえず5と8がよく出てくるということだけ覚えておいてください。

かるーく楽曲に触れていきましょう、①はお馴染みになった12 Stepsの続編、ピンク・フロイドリスペクトのイントロからメタリックなリフ、カオスなインストパートを詰め込んだDTらしい掴みから、珍しくストレートなバラードの②へと続きます。ヘヴィな作品が続いたせいかラブリエの優しい歌声が冴えまくってますね。
バリトンギターを駆使した超絶重苦しいリフにデジタルなシンセが絡み、スローなテンポを維持しながらヘヴィに突き進む③。
続く④はU2始まったんか?と思ったらU2聴いてたんか?で終わる、これまたストレートなポップロック、いつものテクニックは封印して一貫してさわやかな作風であり、サビやCメロでは一緒に歌いたくなるようなDTとしては異色すぎる名曲。
⑤はバッキバキなベースのイントロから恐ろしいスピードと変拍子で突っ走る、今なおライブで披露されまくっているDTの代表曲、数ある作品の中でも群を抜いてプログレメタルしてる一曲ですね。

一度聴いたら忘れられないであろうイントロ、ポートノイもエア指弾きしてます


⑥ではこの時期お馴染みになっていたルーデスのウネウネシンセが期待感を煽るこれまたスピーディーなプログレメタルナンバー、中間のユニゾンパートは緊張感マシマシで今聴いてもハラハラします。ユニゾンの最高難易度は「Take the Time」と「In the~」の双璧と言ったな、あれは嘘だ。
⑧はライブでの演奏頻度も高いタイトル曲、ジャスト24分という大作はDTがこれまで育んできたプログレのエッセンスをすべて詰め込んだ、先人へのリスペクト全開の超人気ナンバー。

またまたポートノイのドラムプレイスルーより、こんなんばっかり覚えてるこの人たちほんま怖い。
後半ではドラムプレイ時のポイントをガッツリ語ってくれています。まさに有料級!


さてここからはアルバムのギミックについてお話していきましょう。
①は冒頭でも触れた通りファ(F)の単音で静かに始まり、続く②はソ(G)、③はラ(A)...というようにキーが階段のように駆け上がっていきます。
このアルバムの収録曲数は8曲、⑧にはFに戻ってきます、アルバムのタイトル通り1オクターブ、つまり一巡するわけです。
一巡という言葉の通り、このアルバムは⑧→①の流れは音階的に同じなのでループに陥ることになります。
最終曲Octavariumの歌詞には「このサークルに囚われている」という一説が出てきます、つまりこのアルバムというサークルは逃げ場のないループを繰り返していくのです。
ちなみにアルバムのブックレットのとあるページには八角形かつ五層構造の迷路に閉じ込められた蜘蛛([8]本足)のイラストがあり、この迷路には出口が存在せず、蜘蛛が迷路から逃れる方法は存在しません。

このように幾重にも仕掛けが重なり、それに準ずる形で展開していく楽曲構成と配置は見事というほかなく、当時ペトルーシは「Octavariumこそが最高傑作である」という旨の発言をしています。
アートワーク/ブックレットには視覚的にも考察を促すような非常に秀逸な仕掛けが多く施されております。もっと言うと収録曲の順番と再生時間にもギミックが隠されています。
ざっと列挙すると
・ディスクの印刷されたイラストデザイン([8]角形に囲まれた[5]芒星)
・アートワークに描かれたニュートンのゆりかごとカラス([8]つの鉄球と[5]羽のカラス)
・ブックレットの最初と最後のページに描かれた糸電話を持つ男の子の指(1ページ目では[3]本、最終ページでは[5]本、合わせると[8])
・Panic Attackの曲順と再生時間がフィボナッチ数列になっている([5]曲目、[8]分[13]秒)

挙げるとまだまだありますが一旦この辺で区切りましょう、私はもう限界です。

またこのアルバムでDTは2ndアルバムより関係が続いていたATCO Recordsとの契約を満了し、次回作からは新たなステージでの出発になります。
何かと揉めた彼らですが結果としてI&Wで世界的な知名度を得るきっかけになったのも事実、この集大成ともいえる作品は契約を終える前の手向けとしたかったのかもしれません。

DTはOctavariumをひっさげ当然のごとくツアーを敢行、結成20周年を迎えたライブは「Score」としてDVD化もされ、オーケストラ編成にて繰り広げられる6DOITやOctavariumはまさに圧巻の一言。
バンドとして表現者としてさらなる高みに達したDTは、新たなる地で例のごとく作品作りに没頭することになるのです。

〇2007【Systematic Chaos】

2ndより苦楽を共にしてきたATCO Recordsを後にし、DTが次に選んだレーベルは大手Roadrunner Records(以下RR)。
ハードロック/ヘヴィメタル専門レーベルとしては他に類を見ない市場規模であるRRがバックについたことにより、4thアルバム以降音沙汰のなかったMV制作やプロモーション活動をレーベルに一任できるようになったことで、より作品作りに集中できる環境が整いました。

こうして2007年に移籍後初の9thアルバム「Systemacic Chaos」(以下SC)をリリース。

メンバーそれぞれの実体験や病、不安定な世界情勢、そして黄金比等々現実的な部分にフォーカスを当てて制作を重ねてきたDTが新作に取り入れたのはまさかのSF/ダークファンタジー、フォーザーキーン!!
時を重ねるごとに進化を続けてきた彼らなので今回も変化を見せつけてきた可能性もありますが、なかなか趣深いものを感じます、④曲目のタイトルなんてダーク・エターナル・ナイトですよ、カッコよすぎるでしょ。

話を戻して内容に触れてみましょう、ポートノイがとある雑誌で「人々がドリーム・シアターに期待する要素のすべて、つまりヘヴィでテクニカル、パワフル、ダイナミックさがある。」と語っていたように、実際かなりテクニカルでありヘヴィな楽曲もあるにはあるのですが、メロディは従来よりやや控えめで掲げたテーマ性に重きを置いているように感じます。

①と⑧「In the Presence of Enemies」はそれぞれ同一の楽曲であり、2分割したうえで最初と最後の曲として挟み込む、というピンク・フロイドのクレイジー・ダイアモンド方式を採用、相変わらずプログレ方面へのリスペクトが止まりません。
②ではどことなく演歌を感じるラブリエのタメが効いた伸びやかに聞かせるサビが印象的な、これまでの壮大なバラードとは少し違ったダークなバラード。
③ではメタリカのごとくスラッシーで疾走するリフから一転、インストパートではキメが印象的な一筋縄ではいかない展開に転がり込みます。
同曲のソロでペトルーシはアームを駆使したスクイール奏法を披露、これはG3で共演したサトリアーニ先生の十八番ですね、しっかり吸収して自らの作品に落とし込んでいます。

FIIのHollow Years以降なんと10年ぶりとなるMV、予算面でも余裕ができたのかCG使ったりして気合入ってます。
尺の都合なのかブツ切り編集されてます。


④では7弦を駆使したヘヴィで不穏なイントロからまさかのラップ、しかもラブリエだけではなくポートノイもガッツリ歌ってます。
インストパートは5thのダンエタを思わせるカオスっぷり、目まぐるしく入れ替わる拍子と超スピードで突っ切るパートはコピー泣かせ。
その他12 Stepsの続編⑤はシリーズ唯一のスローなバラード(?)、内省的で静かに振り返る独白のような構成、中間部の語りではスリップノットオーペスポーキュパイン・ツリー等々超豪華ゲストボーカルが参加。

ごっちゃごちゃの前半から急に落としてきて妙にビビるやつ
ファン撮影のライブ映像ではオーペスのミカエルがボーカルをとる珍しいバージョンも。


デジタルなイントロが近未来感を漂わせる⑥はギターソロを廃し、サビではメロディをかなぐり捨てて重厚なコーラスがDTとしての新機軸を垣間見せてくれます。
⑦はなんかもう映画サントラの終わりらへんを思わせるやりすぎなぐらい壮大なイントロから、ボーカル/楽器隊ともに淡々とじっくり聞かせるしっとりとした中間パートを挟み、溜めに溜めた状態から一気にリフで畳みかけるTHE・プログレッシブロックな佳曲。

このあたりからポートノイだけではなくペトルーシのコーラスも板についてきており、3人での掛け合いが印象的です、RECドキュメンタリーではここぞとばかりにふざけてました。

この時期マイアングはYAMAHAとの契約が満了、新たなパートナーに選ばれたのはペトルーシと同じくMusicman
1stの頃に愛用していたスティングレイを気に入っていたようで、当時新モデルの「Bongo」を本アルバムのツアーから使用開始、丸みを帯びた可愛らしくも未来的なルックスはなんとBMWのデザイナーとの共同開発らしいですよ。
まだ6弦モデルが完成していなかったため5弦を使用してツアーを敢行したそうです、セトリとかどうなってたんでしょうか。

あとこの時期を境にペトルーシが急激にマッチョになっていきます。ワケわからんぐらいでかくなります。
時同じくして髪の毛伸ばし始めた影響もあってかマジで別人レベルの変貌、短髪爽やかペトルーシ帰ってきて…

レーベル移籍後一発目ということもあり気合十分に作りこまれた本作は当時DTの売り上げ記録を更新。
「構築された混沌」のタイトルが示す通り若干のとっつきにくさや難解さが見受けられるものの、じっくり聴き込んでこそ理解に近づく、ある意味最もプログレしてるアルバムかもしれません。

〇2009【Black Clouds & Silver Linings】

早いもので2000年代に突入して10年が経過しようとしていたこの頃、記念すべき10枚目のアルバムを発表することになるわけですが、

先に行っておくとこのアルバム発売直後にDTの歴史において間違いなくトップの超重要事件が起きてしまします。

そんな事件が起こることなど全く知る由もない面々、なぜならこの時点では全メンバーそんなこと頭の片隅にもない状態、良好な関係性のまま制作に移っていきます。
今まさに破滅に向かって走っている彼ら、10thアルバムのレコーディングも滞りなく完了し、2009年6月「Black Clouds & Silver Linings」をリリース。

タイトルは直訳すると「どんな暗雲にもその裏に銀が潜んでいる」要するに「苦あれば楽あり」という意味、Oh!水戸黄門!
冗談はさておき長い長い「苦」の時代を味わった彼らがこのタイトルを冠することには説得力じみたものを感じますね。
実際このアルバムリリースを待たずしてDream Teaterというバンド名の名付け親であるポートノイの父が鬼籍に入るという悲劇もあり、これまでの思い出や感謝をストレートに伝える⑤は涙なしには語れない超傑作、ペトルーシのギターソロもいつも以上に感情が乗っています。

幼少期のペトルーシの実体験を基にした①はいきなり16分の大作、ヘヴィなリフから一転してクリーンのアルペジオとボーカルのメロディーラインが美しい中盤、かと思いきやポートノイの謎ラップとブラストビートで締めくくるカオスな1曲。
②ではSC路線のSFチックな歌詞にストレートなリフとライブでの掛け合いを意識したようなコーラスが特徴的、③はおそらくDTを知らない人に聴かせても抵抗なく受け入れられそうな純粋なバラード、Cメロの盛り上がりにグッときます。

深く美しいクリーンのアルペジオからストレートに進行していくまさしく王道系バラード。

④は6thより続いた12Stepの最終章、これまでのテーマをなぞりながらアルコール依存脱却へのフィナーレへと向かい、最後はシリーズ1作目の「The Glass Prison」のイントロに回帰してきます。
⑥ではイタリアはトスカーナ地方を訪れた際の奇妙な体験とその思い出を語る19分超の大作、「なんか知らんけど家に帰れんかもしれん、めっちゃ不安」という気持ちをここまで壮大にできるもんかね。

10作目にあたりややマンネリ気味か?との批判も見受けられた本作ですが、逆に結成して四半世紀近くになっても一貫してプログレッシブ・メタルを描き続けてきた彼らの作品は
むしろこれまでになく「分かりやすい」領域に達したのではないかと中の人は考えています。
実際収録曲のほとんどが10分を超える大作で占められていますが、手探り状態の90年代初頭よりも楽曲は洗練されており、テクニックや構成は複雑だけど比較的聴きやすい作品に仕上がっていると思います。

月日とともに積み重ねてきた作品作りを通し、更なる高みに達したDTはこの後バンドの存続にかかわる重大な事件に巻き込まれていく事になるのです。

○バンド崩壊の危機

2009年末、ヘヴィメタルバンド「Avenged Sevenfold」(以下A7X)のドラマーであるザ・レヴの他界が報じられました。
一糸乱れぬツインリードが印象的な王道メタルであり業界の未来を担う若手であったA7X、その中でも一際存在感を放つドラム兼コーラスを務めていたレヴの訃報はメタル界にとって計り知れない損失でした。
そんな悲しみに暮れる中、A7Xは歩みを止めず突き進むという力強い決意を表明し、レヴが度々フェイバリット・ドラマーとして名をあげていたマイク・ポートノイを新作のレコーディングに起用しました。
実力のある若手の覚悟に感銘を受けたDTメンバーとポートノイ本人はこの選択に全面的に同意、そうしてリリースされた「Nightmare」はA7Xにとって初の全米1位を獲得、レヴへの花道としてふさわしい記録を打ち立て、ポートノイはNightmareツアーにも参加することとなります。

この判断に残りのDTメンバーは不信感を抱き始めます。

アルバムの参加だけならともかくツアーまで?そこまでする必要は本当にあったのか?などなど猜疑心は募るばかり。
そしてこの問題は最悪の形で結末を迎え、ファンに叩きつけられることとなります。

2010年9月8日、マイク・ポートノイの脱退が公式HPにてアナウンスされました。
発端となったのはポートノイの「バンドを休止させるべきなのではないか」というあまりにも突拍子な提案によるものでした。
曰く、長きに及ぶ活動において新たな風を吹き込むためにも休暇が必要だ、じっくり長めの休みを取って、そのあと華々しい復活を遂げようじゃないか!というもの。

じゃあその間メンバーはどうするん?というペトルーシの至極真っ当な問いに対しても納得のいく返答はなく、その独りよがりな判断に他メンバーは当然激怒。
ポートノイはバンドのマネジメント面やブレーンを務めていただけに、こんな提案を出してきたことにメンバーは失望したのかもしれません。
バンドはもはや自分たちだけでどうにかできる活動規模では無くなっており、メンバーはもちろん活動を支えてくれているスタッフへの配慮に欠けた判断に、他のメンバーは断固としてNoを突き付けます。
しかし皆さんご存知のようにこの男はマイク・ポートノイ、他全員のメンバーと真っ向から対立しても自分の意見は決して曲げません。

結果としてポートノイの提案は受け入れられずバンドは進み続けることを選択、関係性は修復不可能となりポートノイは当時活動25年を迎えたDream Theaterから去ることになるのです。
この騒動の後バンド最年長であったジョーダン・ルーデスがスタジオ外の階段で膝を抱え涙を流したと後に明かしており、ただ憎しみ合っての決断ではなかったということが分かります。

いつしか衰え行くのは当然の理とは言えども、あまりにもあっけない中心メンバーの離脱、まさしく大黒柱を失ったDTはどこへ向かうのか、かつてない瀬戸際に立たされた彼らはどのような決断を下すのか。
その答えと結末は後編にて明らかになることでしょう。