マシュー・キイチ・ヒーフィー
1986年1月26日
山口県岩国市出身
Trivium/IBARAKI(茨鬼)
【画像引用元:https://loudwire.com/trivium-matt-heafy-interview-2021-in-the-court-of-the-dragon-headquarters-tour/】
今回のギターヒーローは、「Trivium/トリヴィアム」のヴォーカル兼ギタリストMatthew Kiichi Heafy-マシュー・キイチ・ヒーフィ-です。
191cmの長身で冷静沈着ながらも、ライブではオーディエンスと一体になるような熱いステージングをこなし安定したギターテクニックを繰り出すメタルギタリストです。
Trivium
1999年に結成。2003年からメジャーデビューを果たし、2005年に発表した「Ascendancy」は世界中にリリースされ数々の賞を受賞しました。メンバーチェンジや演奏スタイルなど試行錯誤をしながらも安定した人気を得ています。来日公演も頻繁に行うスラッシュ系メタルバンドです。
【画像引用元:https://wmg.jp/trivium/】
初めてのギターはレスポールカスタム。
マシューは、ドイツ・アイルランド系アメリカ人と日本人女性の間に日本の山口県で生まれ、翌年にアメリカへ居住。父親の影響で11歳の頃からギターを始めました。父親は息子ができたらレスポールを弾かせようと思っていたらしく、なんと!マシューが初めて手にしたギターはGibsonレスポールカスタムでした。後に自分に一番似合っているギターはレスポールだと語っています。
間もなくしてパワーポップ系のバンドに参加しますが、技術が低くクビにされてしまいます。
【画像引用元:https://twitter.com/matthewkheafy】
悔しい気持ちからギターの練習を毎日数時間こなすようになり、その時に聴いた「メタリカ」に衝撃を受けメタルミュージックに没頭します。翌年、Trivium初代ドラマーのトラヴィス・スミスに声を掛けられ、ギターとして加入しますが、当時のヴォーカルがすぐに脱退したためマシューがヴォーカルを兼任するようになります。
センスと努力が生み出したテクニック。
当時メンバー全員が10代という若さを武器に積極的にライブ活動を行います。
そして、マシューが17歳という若さでTriviumはレコード契約、アメリカツアーなどを行います。着々と人気を得ていく中マシューは悩みを抱えます。それはギターテクニック。
ヴォーカル兼任ということもあり、リードギターのコリー・ビューリーがメインでしたが、ギターソロでのハモリや、Triviumの楽曲としてマシューのギターレベルを上げることが課題となっていました。
そこでマシューはツアーや、レコーディングの間にも死に物狂いでギター練習に没頭します。真面目なマシューは基礎練習を続け、着々とレベルアップしていきます。プレイスタイルについてはスウィープやタッピング、フルピッキングを得意とし、大きく影響を受けたギタリストとして同じヴォーカル兼ギタリストDeathの「チャック・シュルディナー」を挙げています。
2004年からのTriviumのライブ映像や音源年代ごとに聴いていくとマシューの落ち着きやレベルアップしていく様が分かります。
マシューの持って生まれたセンスは他のアーティストからも注目され、2005年にはロードランナーレコード25周年記念プロジェクトで元Slipknotジョーイ・ジョーディソン、Machine Head ロブ・フリンなど錚々たるメンバーから19歳とうい若さにもかかわらず、リーダーとして抜擢されます。
原点回帰のレスポール
マシューが使用しているギターは初期においてはエンドース契約を結んでいたDEAN社製の「ML」やシグネイチャーモデル「MKH」を使用していました。尊敬するパンテラのタイムバッグ・ダレルや、メタリカのジェイムズ・ヘッドフィールドの影響もあり変形ギターを好んでいたようです。
↑DEAN社製のシグネイチャーモデル日本をモチーフとしたカラーリングのML
↑DEAN社製DIME Razorbackも使用。
2009年頃からは契約が切れたDEAN社製は使用せず、Gibson/ギブソン、epiphone/エピフォン社製のレスポールカスタムを使用しています。ギブソンレスポールカスタムにはEMG81ピックアップを2基搭載し、Marshall/マーシャルアンプ「JVM410」に直結したシンプルなセッティングでした。曲によって7弦を使用することになりますが、当時ギブソンはレスポールは6弦しか製造しておらず、7弦仕様のエクスプローラーやフライングVを使用していました。
↑7弦のエクスプローラーにもEMGピックアップを搭載していました。
2013年以降はエピフォンで6弦と7弦ギターのシグネイチャーモデルを制作しました。また、父親から買ってもらった初めてのギブソンカスタムレスポールも使用していることがあります。
ギブソンではなく、エピフォンからシグネイチャーモデルを発売した理由については、
「ファンの中心である10代20代の若者が購入しやすい価格帯だから」
「アーティスト本人も同じブランドじゃないとシグネイチャーモデルなんて言えないよ。」
と語っています。
初期のシグネイチャーモデルにはEMGが搭載されていましたが、最新のモデルにはFishman製のFluenceピックアップが搭載され、コイルタップ可能な仕様となっています。また、ネックジョイント部分のヒールカットも初期モデルの深めから浅めに変更され、なるべくレスポールの形を崩したくないという理由から、7弦モデルでも24フレットにはしていません。
レスポールの伝統を尊重しつつも、モダンなルックスとサウンドになっています。マシュー本人が使用しているモデルにはチューニングの安定性が高いEVERTUNE製のブリッジが6弦、7弦ともに取り付けられています。それ以外は同じスペックとなっているようです。
ソロ活動などではGibson社製のアコースティックギターや、Red Layer社製などの8弦、9弦ギターを使用しています。
↑Red Layer社製9弦ギター
【画像引用元:https://twitter.com/matthewkheafy】
ライブでも安定した演奏性を求めるマシューは余計な振動を防ぐフレットラップを使用し、ギターストラップは両肩に掛け、肩の負担を和らげるデュアルストラップを使用しています。
↑通常のストラップに加え、ギターボディに取付ける特殊ストラップ
使用している弦は、ジム・ダンロップ製のTriviumシグネイチャー弦を使用しており、6弦は10-52、7弦では10-63をどのチューニングでも使用しています。アルバムや曲によってレギュラーチューニング、ドロップD、半音、1音下げとバラバラですが弦のゲージは質感を1番に考えて統一しているそうです。
ピックもジム・ダンロップ製のシグネイチャーモデルを使用。
アンプも原点回帰?
初期の頃使用していたアンプはPeavey製のTripleXXXや5150、6505を直結で使用していました。マーシャル、メサブギーを経てAxe-Fx Ⅱ、ケンパーも使用してきましたが、現在はEVH 5150Ⅲを使用しています。ライブ現場によってはケンパーも使用しているそうです。アンプなどサウンドの要となる重要なものはリードギターのコリィと合わせています。
コンパクトエフェクター類はラックに収められ、足元にはチャンネル切替スイッチのみとなっています。
ヴォーカリストとしてのマシュー
ヴォーカルのスタイルはパンテラのフィル・アンセルモ、マシーンヘッドのロブ・フリンの影響があると語っていて、図太いスクリームを出すことに苦戦していたそうです。
専門のレッスンを受けていたそうですが、一時は喉への負担を考慮してギターのコリィがスクリームを担当していました。
ギタープレイスタイルやスクリーム声法を試行錯誤し再びスクリームパートをマシューが行うようになります。独特の口の開け方で発声するスクリームはフィル・アンセルモを彷彿とさせる図太く伸びやかになっています。
メロディラインを丁寧に歌いあげ、安定したスクリームヴォイスもTriviumの魅力の一つとなりました。
神対応の喜一くん。
日本生まれということもあり、日本では「喜一くん」と呼ばれています。
日本来日時には必ず現地の街を歩き、様々な文化に触れているようです。母親の影響もあり日本文化には関心が強く、全身には和柄のタトゥーをいれており、Triviumのアルバムタイトルを「Shogun/将軍」にするなど、かなりの日本好きと思われます。
また、ファンに対しては神対応が好評でサインや写真は当たり前、楽器屋でファンと遭遇した時はストラップや弦をプレゼントしたり、ソロ活動でもチャリティライブに積極的に参加し、2011年には当時、腰辺りまで伸ばしていた髪の毛をバッサリと切り、小児癌・白血病と闘う子どもたちへの医療用ウィッグチャリティに寄付したり、退役軍人のメンタルヘルスを支援する慈善団体の理事に加わるなど精力的に活動を行っています。
シグネイチャーモデルを購入しやすいエピフォンを起用したのもうなずけます。
IBARAKI/茨鬼
マシューのソロブラックメタルプロジェクトとしてブラックメタルバンド「エンペラー」のフロントマンでもあるイーサーンのプロデュースで「IBARAKI-茨鬼-」が始動しました。
プロジェクト名の「イバラキ」は平安時代に京都を荒らしまわった「茨木童子」がモチーフとなっており、歌詞は全編英語であるもののタイトルは日本語が使われています。
初タイトル「RASHOMON-羅生門-」ではTriviumメンバーやあらゆるジャンルのゲストが参加していますが、イーサーンとマシューの世界観が詰まっていて、日本的なサウンドやシンフォニックやプログレを感じさせる仕上がりになっています。
様々な枠にとらわれず音楽を追及するマシュー。これからの活動に期待です!
Trivium専用のガレージを改造したスタジオで行われる演奏重視のリハライブは見応えありです!
Trivium - "In The Court Of The Dragon" (Live from The Hangar)
https://www.youtube.com/watch?v=6nO-iGolNtk