ジョン・メイヤー
本名:John Clayton Mayer
1977年10月16日生れ
コネチカット州ブリッジポート出身
ジョン・メイヤートリオ/デッド&カンパニー
【画像引用元:https://front-row.jp/_ct/17235195】
今回のギターヒーローはシンガーソングライターで「現代の三大ギタリスト」に選定されたジョン・メイヤーです。若くして大御所ギタリストたちと肩を並べ、グラミー賞常連の天才ギタリストです。
【画像引用元:https://www.npr.org/sections/world-cafe/2017/04/14/523652905/john-mayer-on-world-cafe】
師匠との出会い
ジョンは幼い頃に見た映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で主人公を演じるマイケル・J・フォックスが、チャックベリーの名曲「ジョニー・B・グッド」を演奏するのを観てギターに興味を持ち始めました。その後スティーヴィー・レイ・ヴォーンやジミ・ヘンドリックスやスティングなどのブルースやロックを聴き、父親のギターで練習を始めてギターに熱中していきます。
↑1990年不慮の事故で亡くなったブルースロックの神スティーヴィー・レイ・ヴォーン
僅か16歳で地元東海岸のバーで演奏するようになり着々とギタリストとしての経験を積んでいきます。高校卒業後はクインシー・ジョーンズやスティーブ・ヴァイを輩出した名門バークリー音楽大学に入学します。そこでギター技術の転機となる講師のトモ藤田に出会います。
ジョンは元々日本に関心が強く、高校時代に交換留学生として来日していたこともあり、京都出身のトモ藤田と意気投合。朝9時からのレッスンも休まず理論や技術を学んでいましたが、ジョンは音楽活動の地をアトランタに移すため僅か16週間で学校を辞めます。
ですが、現在でもトモ藤田との関係は続いておりジョンがどれだけトモ藤田を師事していたかがうかがえます。ジョンはトモ藤田と出会ったことで、
「できないことができるようになった。ではなく、思いもつかないプレイができるようになった。」と語っています。
ポップとブルース
活動の地をアトランタへと移したジョンは友人クレイン・クックとバンド「ローファイ・マスターズ」を結成し、ミュージック・バーなどで活動しますが音楽の方向性の違いから解散します。この頃からジョンはブルース、ロックよりポップスに興味を持ち始めます。
ソロ活動を始めたジョンは2000年サウス・バイ・サウスウエスト(音楽・映画交流祭)に出演し、ジョンの演奏に目を止めたレコード会社と契約します。
翌年にはデビューアルバム「ルーム・フォー・スクエア」を発売。ツアーも好評で人気は広がっていきます。この頃の楽曲はポップ感が強く世間にはブルース・ロックギタリストというよりシンガーソングライターとして認識されていました。
2rdアルバム「ヘヴィアー・シングス」からはギターを意識した楽曲が増え、ギタリストと認知されつつ人気も高まっていきました。
ブルースとポップが融合されたような3rdアルバム「コンティニュアム」ではジョンの最高傑作と称され、シンガーソングライター/ブルースギタリストとしてトップスターに輝きました。ジミ・ヘンドリックスのカバー曲「Bold As Love」を含めジョンの名曲とされる「Slow Dancing in a Burning Room」「Gravity」が収録されており、ギターを前面に出したブルースロック色が強いジョン本来の音楽とも呼べる仕上がりになっています。
ギタリストとして
3rdアルバムからブルースギタリストと注目されると、そのブルージーなメロディにパワフルなピッキングに完璧なパフォーマンスは世界中で人気を呼び、現代における三大ギタリストの一人に選ばれました。ジョンのプレイはブルージーながらもポップの要素も取り入れることができ、どんなジャンルでも対応ができるマルチプレイヤーなのです。
【画像引用元:https://patch.com/california/palmdesert/singer-songwriter-john-mayer-perform-coachella-valley】
3rdアルバム以降はカントリー、ニューミュージック、リラックスポップなどテーマは変わりつつも上手くギターを取り入れた楽曲になっています。テイラー・スイフト、エド・シーランらと共演したりライブではヴァン・ヘイレンのカバーを披露したり多岐にわたる音楽で飽きさせません。ジョンのギタリストとしてのスタイルは幅広くまだまだ楽しませてくれます。
プレイスタイル
基本はブルース、ロックといったスタイルでパワフルかつアグレッシブなピッキングはスティーヴィー・レイヴォーンの影響が大きいと思われます。手癖リックですが微妙にずらしてフレーズを入れたりリズムを変えたりとスティーヴィー・レイヴォーンの癖と似ているところがあります。また、ジョンは指弾きも得意でエレキギターでも指で独特なニュアンスを出し、アコースティックではスラップに近いアグレッシブなソロを弾いたり、カントリースタイルや、スリーフィンガーもこなします。
Fenderとジョンメイヤー
デビュー前から2013年まではフェンダーストラトキャスター愛用し、多くのストラトを使用していました。中でも通称「BLACK1」は一時メイン機として使用されフェンダーカスタムショップから剥げた塗装や、使い込まれたトーンを忠実に再現したシグネイチャーモデルが発売されました。
スティーヴィー・レイヴォーンモデルはジョンが初めてお金を貯めて購入したギターで現在でも良く使用されています。
2014年にジョンはフェンダー社と契約を更新せずP.R.Sと契約をします。ギタリストの誰もが思ったはずです。
「…なぜ?しかもP.R.S?」
ジョンはインタビューで語っています。
「僕はギターを古い時代の呪縛から解放させたかった。もっと新しい今の時代を取り入れたかった。」
また、フェンダーカスタムショップのビルダーマイク・エルドレッドが抜けたことも大きいようです。ジョンは革新的なギターのアイディアなどをフェンダー社に伝えますが、契約上困難であることや、フェンダー社の意向に合わないなどの理由で実現できないことが契約解除の要因だと語っています。決してフェンダー社をディスっているわけではありませんが、ジョンは
「歴史に残る、高値が付くギターを弾きたいんじゃなく、20年後でも同じトーンが出せて誰もが手に入れることのできるギターを作りたい」
と語っています。
P.R.Sとジョンメイヤー
P.R.Sはそんなジョンの意向を汲み共にギターを作ってくれるということで、2014年からジョンと共に歩み始めます。P.R.S創業者のポール・リード・スミス氏は現在でも製造経営に関わっていて積極的にギターのアップデートに携わっています。
そして、ジョンのアイディアを元に製作されたのが「Silver Sky」です。
【画像引用元:https://prsguitars.com/electrics/model/silver_sky_2021】
P.R.S特有のダブルカッタウェイシェイプに3:3のヘッドですが、シングルピックアップの配列などストラトキャスターを彷彿とさせるモデルです。
一番の特徴は個体差を感じさせないことです。通常どんなに高額で作りの良いギターでも個体差にバラつきが生じます。しかし、Silver Skyは個体差を感じさせない作りで、ヴィンテージサウンドが直ぐに出せることができます。なぜ、同じギターを買ったのに同じ音が出ないのか…当たりハズレがあっていいのか…そんなジョンの思いから完成したSilver Skyはコストパフォーマンスにも優れた革新的なギターとなりました。
ジョンはあるライブイベントで、メインで使用していたSilver Skyをファンにプレゼントしています。個体差がなく同じ音が出るギターなんだということを証明しています。
【画像引用元:https://www.guitarworld.com/artists/john-mayer-explains-the-heat-around-his-cool-new-prs-silver-sky-guitar】
Silver Skyを見て、「じゃぁストラトでいいじゃん!」と思った人はぜひ一度弾いてみてください。ストラトとは全く違った印象を受けるはずです。ヴィンテージをベースに製作されたピックアップは新品ながらもキンキンとした音がなくしかもローノイズ。太くパワーのあるサウンドでストラトに少しブーストをかけたかのようなサウンドです。
ボディバランスは良くネックの握り心地も違和感なく疲れない。
「ずっと弾いていたいと思わせるギターです。」と、どのレビューにも書いてあるように本当に馴染みやすいストレスのないギターです。
近年Silver Skyと同様に多く使用しているギターはPRS Private Stock Super EagleⅠ/Ⅱのジョン・メイヤーシグネイチャーモデルになります。
【画像引用元:https://prsguitars.com/electrics/model/private_stock_super_eagle】
セミホロウボディに、中央に配置されたコイルタップが可能なNarrowfiled JMピックアップはプリアンプを内蔵しており従来のギターでは考えられないサウンドバリエーションを実現しています。
【画像引用元https://prsguitars.com/electrics/model/private_stock_super_eagle】
また2015年から加入しているバンドDead&CompanyではMcCarty594を使用しています。バンドのサウンドに合わせているのかハムバッキングサウンドをメインとしています。
アコースティックギターはマーティン社の000-28を使用しており、その後同社より制作されたシグネイチャーモデル「Martin OMJM」を使用しています。
デッド&カンパニーでのライブではジェリー・ガルシアが愛用していたギター通称「ウルフ」をメトロポリタン美術館から借りて弾いています。ウルフはチャリティーオークションで2億円の値が付くほどの貴重なギターです。どことなくSuper EagleⅠ/Ⅱに似ている気がします。
ブルースロックアンプと言えば
ブルースロックギターの神、スティーヴィー・レイヴォーンが使用していたアンプと言えばアンプの絶対的到達点「ダンブルアンプ」。アレクサンダー・ハワード・ダンブルがハンドカスタムメイドで制作する一般では売られていないアンプです。ダンブル氏が認めたギタリストじゃないと売ってくれないとか、もう引退しているとか噂があります…。
ダンブルアンプは弾き手のニュアンスが全て反映され、ピッキングする前に音が出ると言われるほどレスポンス、立ち上がりが早いことで有名です。ギタリストにとってはごまかしきがきかない反面、音のイメージを全て具現化できるといった夢のようなアンプです。ジョンはそんなダンブルアンプの使用者の一人です。
よくライブでも使用しているのがDumble Overdrive Special
そして同時に使用しているのがK&M Analog Designs社のTwo-Rock。こちらも使用歴が長く、ジョンのシグネイチャーモデルも制作されています。
P.R.Sとの契約後はP.R.S J-MOD 100というジョンとP.R.Sが共同制作シグネイチャーアンプを使用しています。会場やセットリストによってアンプは入れ替わっており、その他にもフェンダーやVOXを使用していることがあります。
収集家
エフェクター類はコンパクトエフェクターを使用していることが多く、入れ替わりが激しくツアー中でも変更されることがあります。一時期は足元に30個近く並べてMIDIコントローラーも配置し足元を囲んでいましたが、現在は必要最低限といった感じです。
①BOSS OC-3 Super Octave ②MXR M-107 Phase100 ③Ibanez TS-10 Tube screamer classic ④Way Huge Aqua Puss Analog Delay ⑤Strymon Flint Tremolo&Reverb ⑥Pete Cornish Tape Echo Simulator ⑦BOSS TU-3 Tuner ⑧Ernie Ball 6180 VP JR Volume Pedal ⑨Real McCoy Custom RMC8 Guitar Eqwahlyzer Wah ⑩BOSS TU-3 Tuner ⑪Keeley Katana Pre Amp ⑫Klon Centaur ⑬Electro-Harmonix Q-Tron Plus ⑭Strymon OB.1 Optical Compressor and Clean Boost
ジョンはヴィンテージエフェクターから最新のエフェクターまでコレクションしておりその数は500点以上に及ぶらしいです。もともと収集癖があるジョンは腕時計コレクターとしても有名で専門誌にも度々掲載されています。ライブにも腕時計コレクションを持ち込み、本番前にどれを付けるか悩んでいるそうです。
よく見るとライブ中に腕時計が変わっていることがあります。プレイに関係あるのかただの気まぐれなのか...。
これからのジョン・メイヤー
業界きってのプレイボーイのジョンは今までにジェシカ・シンプソン、ジェニファー・アニストン、テイラー・スウィフト、ケイティ・ペリーといった有名女性セレブと浮名を残してきました。
【画像引用元:https://www.irishmirror.ie/showbiz/us-gossip/katy-perry-john-mayer-look-2372375】
2023年現在46歳になり、未だ独身を貫いているが50歳にまでには結婚したいと語っています。元カノたちや周りが結婚していくのをみて少し寂しくなるそうです。元カノの歌を聴いて「僕の事かな?」と思っているらしい...。
ジョンの曲には官能的な歌詞が多いですが、そういった寂しい思いなども全て音楽で解消しているのでしょうか。過去には、
「ギタリストなんて独りよがりのナルシストが多いんだよ。ギターアルバムは売れないけど歌って踊れば売れるだろ?」
と、皮肉っぽく語ってました。
ブルースロックという古いジャンルは淘汰されていくのでしょうか。たしかに日本で流行している楽曲にはギターソロが聴けないし、ロックと言えばラウド寄りになっている傾向があります。スティーヴィー・レイ・ボーン、エリッククラプトン、B・Bキングなどのブルースロックをジョンのような革新的なギタリストたちによって受け継ぎ、創出していってほしいものです。