坂崎幸之助
本名:坂崎幸二
1954年4月15日生れ
東京都出身
【画像引用元:https://realsound.jp/2021/03/post-733078.html】
今回のギターヒーローは日本のレジェンドバンドTHE ALFEEのギター/ヴォーカル/パーカッションを務める「坂崎幸之助」です。
【画像引用元:https://natalie.mu/music/gallery/news/137569/325308】
日本のフォークの伝道師と呼ばれるアコースティックギターの名手であり、マルチな音楽家とも知られています。自身のバンドTHE ALFEEでも巧みな技術で複雑な楽曲もこなしており多彩な才能をみせてくれます。
神童と呼ばれたギター少年
幼い頃から何でもそつなく器用にこなす坂崎は学業でも優秀で、小学生の頃から神童と呼ばれていたそうです。学校でもトップを争うほどの優秀な坂崎が中学生の頃、吉田拓郎の名曲「古い船をいま動かせるのは古い水夫じゃないだろう」(※後のイメージの詩)を聴いて衝撃を受け、吉田拓郎をはじめとするフォークソングにのめり込んでいきます。
ギターに興味を持った頃はビートルズやベンチャーズの影響でエレキギターを欲しがっていましたが、60年代当時は「エレキギター=不良」のイメージがあったため、なくなくアコギを買ったそうです。当時、音源がレコード、もしくはラジオしかなかった時代で、譜面や詳しい情報も無く耳だけが頼りでしたが、研究熱心な坂崎は何度も音源を聴き様々な曲をコピーしながら練習したそうです。変則チューニングなどのコピーはライブ盤を聴いてMCの最中にしているチューニングの音を聴いたりしてコピーしていたそうです。
高校に進学するとフォークソング同好会を設立、地元の音楽コンテストや文化祭で実力をあげていきます。
いつのまにかTHE ALFEE
高校三年生の頃、コンテストで知り合った桜井賢(THE ALFEE)が所属するグループと意気投合し、サポートとして飛び込みで参加します。コーラスやギターアンサンブルも高評価で、坂崎はそのままグループに残り活動を続けるため桜井と同じ大学に進学します。
そして大学で知り合った高見沢(THE ALFEE)と意気投合。ハードロック好きの高見沢が、坂崎と意気投合できたのは共通としてビートルズや、CSN&Yなどのギターやコーラスに魅力を感じていたからだそうです。そして、坂崎は高見沢をグループに招き入れ4人組として活動を始めていきます。コンテストで名を広めはじめるとレコード会社の目にとまり、話はあっという間に進み、4人組グループ「ALFIE」としてデビューします。
デビュー曲はルックス重視で選ばれた高見沢がハンドマイクでボーカルとなり、メインボーカルだった桜井がリズムギターになった。本人たちの意向は通らずにアイドル路線で売り出された。
その後、メンバーの一人が脱退しますが、3人で地道に活動を続けデビューから10年後、メリーアンで大ヒット。1987年頃に「THE ALFEE」として改名し、完成度の高いライブや演奏技術から人気を呼び、2023年現在でもTHE ALFEEとして毎年行われるコンサートツアやイベント、ラジオなどのメディア出演など様々な分野で活動しています。
どんな時でもアコースティックギター
坂崎はどんな時でもアコースティックギターを抱えています。それはギターを始めた頃からだそうで、テレビを見ているときも、ご飯を食べているときも、友だちと麻雀しているときも離さなかったようです。その為か技術やレパートリーは数多く、今は日本のフォークの伝道師と呼ばれています。もちろん、日本フォークだけではなくビートルズにも精通しており、洋楽のコピーも得意としています。特にTHE ALFEEとして演奏するサイモン&ガーファンクルのカバーは本場NYフォレスト・ヒルズ・スタジアムで演奏され高評価を得ています。
また、THE ALFEEでのハードロックやメタル調な楽曲でもアコースティックギターで演奏しており、エレキギターに負けない高度なフレーズや印象的なプレイをみせています。
過去にライブで高見沢がマーシャルアンプを何台も重ねて爆音で演奏していると、「坂崎さんは何を演奏しているんですか?」と質問されたこともあるそうです。
1980年代エレアコが普及しておらず、オベーションやタカミネのエレアコを使用していましたが、大音量で鳴らすとハウリングしたり、アコギのようなサウンドが損なわれるため様々なギター会社が試行錯誤していました。
そんな爆音のTHE ALFEEのライブで使用できるようにアコースティックギターの研究をYAMAHAの技術者と何度も行い、爆音の中や野外ライブでも耐えるアコースティックギターを制作しています。そのYAMAHAの技術者こそがテリー中本ことTerry’sTerryの創設者「中本輝美」です。現在でもテリー中本氏とギターブランドを立ち上げるなどライブで使用できるアコースティックギターの研究を続けています。
【画像引用元:https://www.instagram.com/p/CAaSfzYFtsa/?img_index=1】
※Terry’sTerry/日本初のオーダー制アコースティックギターブランド。さだまさし、石川鷹彦、長渕剛、伊勢正三などアコギの名手が愛用している。
Terry’sTerry製のギターはいくつも所有しており、長渕剛モデルやショップ別注モデルなどもライブで使用しています。
ギターブリーダー
坂崎が所有するギターは多く300本以上を所有しているそうです。ヴィンテージ物が多いですが、ライブで使用する変則的なギターも多く、特殊なダブルネックや変形ギターも所有しています。名器も多く所有していることから様々なアーティストに貸し出しています。
※ 坂崎所有のTerry’sTerry TJ-80を弾くシンガーソングライターのmiwa。
またコレクターからはぜひ弾いてほしい、鳴るように育てて欲しいなどギターを預ける人もいるそうです。「坂崎が弾くと鳴らないギターが鳴るようになる!」と言われているそうです。
坂崎が言うには全弦をガンガン弾く(通称:泉谷弾き)を1時間もすればある程度鳴るようになるんだそうです。
レコーディングとライブで使用するギターは分けられていましたが、近年ではPA音響技術の向上や、「弾いてこそギター!」の信念から何百万円もするようなヴィンテージギターもライブで使用されています。
坂崎ギターコレクション
Terry’sTerry TS-100CS 通称No.8
【画像引用元:https://otn.fujitv.co.jp/char_guitarmuseum/backnumber/guitars_15.html】
テリー中本氏が制作したシリアルナンバー8の名器。1991年頃から現在でもライブ活躍している1番のお気に入りのギター。YAMAHAの名器CWE-58と同じ楕円形のサウンドホールに薄型のボディが特徴的で、ネックシェイプはオールドマーティンのような程よい三角シェイプとなっています。フィンガーピッキングやアコースティックな楽曲でここぞという時に使用されています。アコースティックギターは共鳴しないと鳴らないが、ステージ上では共鳴を押さえないとハウリングしてしまう。アコースティックギターの音色を共鳴しないように鳴らすという矛盾なことを実現させたTHE ALFEE坂崎幸之助の特別な1本。
毎日のように使用していることから負担を軽減することが考慮され、坂崎とテリー中本の共同ブランドTSKからNo.8を再現したモデルが制作され、ライブで使用されています。ちなみに、テリー中本が工房をたたんで引退しようとしていたところに坂崎がTSK立ち上げの話を持ち掛けて何とか実現したそうです。TSKはOEMでテリー中本監修のもと寺田楽器で制作されています。
TSK No.8 Ltd Aged
経年変化したボディカラーや無数のピック傷などの細かな個所を再現したAgedモデル。限定販売されたが既に完売しており入手困難な1本です。
TSK TSK-5
【画像引用元:https://otn.fujitv.co.jp/char_guitarmuseum/backnumber/guitars_15.html】
コードストロークがメインな楽曲で多用されている1本。TSK-5を使用するまではYAMAHA APX-50を使用しており、開発にも関わっていたそうです。
Martin 000-28 1951年製
長きにわたりレコーディングのメイン機として愛用された1本。オールラウンドに優れた個体で低音が出過ぎずまとまりある1本だそうです。
Martin D-45 1968年製
【画像引用元:https://audee.jp/news/show/6795】
2009年頃に約400万で購入した1本で2010年以降のレコーディングで活躍した1本。CSN&Yが使用していたこともあり憧れのサウンドがお気に入りだそうです。近年はライブでも使用され、高見沢が所有するD-45customと共演も実現している。
MartinD-18は1973年に購入したもので、プロになるなら一番いい物を...と祖母から資金援助して購入できた思い入れの強い1本。
写真:右Martin D-45 左Martin D-18
坂崎が所有するMartinは、オーダーカスタム、ヴィンテージ、値段が付けられないような名品、著名人から託された逸品など数多くあり紹介しきれません…。他にもGibsonも使用していることがあり、近年では1965年製のハミングバードを使用しています。近年は年齢的にもギターの整理をしているらしいですが、楽器屋や、様々な方面からギターの話が舞い込み手にして気に入れば購入しているそうです。
ライブではTerry’sTerryを筆頭にTSK、YAMAHA、ESP、VGなどを使用しています。【画像引用元:https://otn.fujitv.co.jp/char_guitarmuseum/backnumber/guitars_15.html】
Terry’sTerry12弦ギター
ライブ、レコーディングでも使用されている12弦のメインギター。元は1980年代に使用していたYAMAHAのCWE-58-12でテリー中本によりネックとブリッジが改良された。No.8同様TSKで同モデルを制作し、負担軽減によりTerry’sTerry12弦は半音下げチューニング専用となり、TSKの12弦モデルはレギュラーチューニングとして使用しているようです。特殊ギターシリーズ
THE ALFEEでの楽曲では12弦、ガットギター、マンドリン、変則チューニングなどを用いた複雑な楽曲が多く、ライブで再現するために特殊なダブルネックギターを使用しています。多くが寺田楽器が制作するVGだが、ESP,YAMAHA製のオーダーカスタム品を使用しています。
VG 6弦スチール+6弦ガットギター
VG 12弦スチール+6弦ガットギター
VG&Infie Wネーム 12弦+6弦
通常ダブルネックとなると12弦+6弦が定番だが、ガットギター、マンドリンなどの組み合わせがあり変則チューニング用に6弦+6弦のダブルネックに12弦+6弦+ガットギターのトリプルネックギターもライブで使用しています。
【画像引用元:https://www.instagram.com/kohnosukesakazaki/】
ライブではベースやエレキギターを演奏することもるマルチプレイヤーとしても活躍しています。また、THE ALFEEでの坂崎と言えばパーカッションも有名です。1984年以降からマイクスタンドが組み込まれたパーカッションセットが組まれており、ヴォーカル、コーラスをこなしながらもギター、パーカッションを織り交ぜて演奏しています。
スネアドラムに、電子パーカッションROLAND OCTAPAD SPD-30、シンバル2枚がセットされ、液晶モニター、モニタースピーカー、マイク、ドリンクホルダー、ピックホルダー、カポタスト類のアクセサリー置きなどが設置されキオスク状態になっている。
アコースティックギターの必需品とも言えるカポタストは主にゴム製のカポタストを使用しています。金属製だと音がシャープになりやすくなるということから通常はゴム製を使用しています。
転調のある楽曲ではグライダーカポタストを使用しており、器用にも親指だけで転調させています。
アコースティックギターのテクニックは誰もが認める一級品。得意のスリーフィンガーをはじめとするアコースティックギターの技術は網羅していると言っても過言ではないほどです。また、長く培ってきたライブ経験で演奏力は非常に高くどんな状況でも対応できるライブアーティストです。
ギター、パーカッション、ハープ、ベース、マンドリン、リードヴォーカル、コーラス...一回のライブで何役もこなすマルチタスクプレイヤー。
他のアーティストとコラボすることも多く、ギターテクニックのみならずコーラスも評価が高い坂崎は、ライブ、レコーディングに参加してることも多く様々なジャンルで活躍しています。60年代フォークソングを網羅していることから大御所アーティストとの共演も多いが、新人など若いアーティストとも交流がある為、音楽界では懸け橋的な存在としても活躍しています。
THE ALFEE結成50周年
2023年で結成50周年を迎えたTHE ALFEE。アコースティックグループとしてデビューしましたが、今ではハードなメタル調の楽曲までこなすマルチなグループとして日本を代表とするバンドとなりました。そこには坂崎の演奏技術も大きな支えとなっています。高見沢のイメージを具現化できる技術力と演奏力を兼ね備え、メンバーはもちろんのこと様々なアーティストや文化人の懸け橋となる人間力は音楽界の宝です。デジタル音楽が主流となりギターがない楽曲も増え、スリーフィンガーやハモりコーラスなどが陰りをみせていますが、ぜひとも令和の時代にも受け継がれていってほしいものです。
坂崎珠玉のテクニック集
・シュプレヒコールに耳を塞いで
オープンDチューニングでかき鳴らすアコースティックロックな1曲。ライブアレンジでは後半の高見沢とのギターソロバトルが圧巻です。坂崎が弾くのはもちろんTerry’sTerry No.8、高見沢はMartinの最高位クラスのD-45カスタム。二人ともこれでもかというくらいガンガンに弾いています。
・鋼鉄の巨人
THE ALFEEの中でも激しいハードロック調の楽曲で、高見沢のエレキとツーバスが爆音で鳴るな中エレキギターソロ終わり”3:08”辺り一瞬のブレイクで光る坂崎のフレーズ。高速スリーフィンガーは絶品。
・明日の鐘
ガットギターのイントロから始まるロックバラードの楽曲。12弦とガットのWネックギターで静と動を表現した楽曲。
・明日なき暴走の果てに
THE ALFEEの実力の凄さがわかるアコースティックの名曲。見事な三声ハーモニーと緻密に作り込まれた2本のギターアンサンブルが絶品です。
・Anji
デイヴィ・グレアムのインスト曲「アンジ」をアコギの名手で坂崎の先輩でもある石川鷹彦とセッション。リズムとリードの切り替えをバランスよく配分して相手の出方で合わせる経験豊富だからこそできるセッション。
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