トム・モレロ
本名:トーマス・トム・バプティスト・モレロ
1964年5月30日生れ
ニューヨーク州出身
レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン/オーディオスレイブ/ストリート・スウィーパー・ソーシャル・クラブ/ナイトウォッチマン
今回のギターヒーローはギターを変幻自在に操るギターの魔術師「トム・モレロ」です。
伝説のバンド「Rage Against The Machine/レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン」のギタリストで一躍有名となり、独創的なギタープレイで数々の異名を持つ天才ギタリストです。
社会派エリートギタリスト
社会的政治活動を行う父親、教師でもあり社会運動家の母親の元に生まれたトム。
幼い頃から社会、政治活動に参加し、またトム自身も黒人として批判的な扱いを受けていたことから政治に興味を持ち始めます。
中学生の頃にレッド・ツェッペリンを聴き音楽に関心を抱き、ギターを始めようとしますが、金銭的な問題からギターが購入できず、高校進学後にギターを始めることになります。
高校では、なんと現Toolのギタリスト「アダム・ジョーンズ」が同級生としており、トムとメタル、パンクを基本としたバンド「エレクトリック・シープ」として活動していました。
バンド活動の傍ら高校での成績は優秀で、進学した先はなんと!!ハーバード大学政治学部なんです。「ギターの練習は1日5時間以上していたよ。政治学を専攻してヴァンヘイレンを弾いていたのは僕だけだよ」って語っています。
5時間もギター弾いて、バンドして…それで首席で卒業しているんです。
バンド仲間にはノーベル化学賞を受賞した化学生物学者キャロリン・ベルトッツィ教授もいたそうです。エリート揃いのバンドの楽曲聞いてみたいですね。
↑トム・モレロとアダム・ジョーンズの高校生時代
Bombtrack
大学卒業後はバンド活動ではなく、ロサンゼルスに移り上院議員の秘書の仕事に就きますが、政治思想の違いから解雇されます。それからは、音楽活動に専念するようになります。
そんな中とあるクラブで怒りを込め拳を振り上げながらラップを披露するザックに出会います。政治思想や音楽的センスに意気投合した二人は、ザックの親友ベースのティム、知人の紹介から出会ったドラムのブラッドと1991年に「Rage Against The Machine/レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン」を結成します。
翌年には5,000本のデモテープを売り業界から注目を集めます。
反政治的メッセージが込められた過激な歌詞を主にしていたレイジは、
「創作活動の自由の保障」を条件にレコード会社と契約します。
そして、1992年デビューアルバム「レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン」を発表。
1963年に差別反対に抗議するべく焼身自殺したタイの僧侶の写真をジャケットに起用し、レイジの猛烈な社会批判をアピールし、ザックの反骨心むき出しのラップに、トムの独創的ギター、ティムとブラッドによるヘヴィなグルーブが高評価となり、ミクスチャーロックのパイオニア的存在として人気を得ました。
アルバムは500万枚の大ヒットとなり90年代を代表とするモンスターバンドとなりました。
楽曲としての人気はもちろんですが、政治に対するパフォーマンスにも多くの支持をえており、ウォール街連邦公会堂でのゲリラライブ、ライブ中に星条旗を吊るしあげて燃やしたり、アルバムジャケットや、歌詞に過激な内容を使用したりと反政治活動でも評価を得ていました。
↑ 1999年にリリースされた「sleep now in the fire」のゲリラ撮影ライブには監督マイケルムーアが起用された。
殿堂入り
レイジは数々の伝説を残しながらもザックの脱退を機に2000年に解散します。トムを含む三人は元サウンドガーデンのクリス・コーネルをボーカルに迎え「オーディオスレイヴ」を結成します。レイジのグルーブを感じつつもロック色が強く重くヘヴィなサウンドが特徴的です。アルバム3枚を出しますが、2007年にレイジが再結成されクリスが脱退を発表します。これによりオーディオスレイヴは活動を休止します。
レイジは再結成後ライブ、ワールドツアーを行い新たな伝説を残し続けています。
2023年にはパフォーマンス部門でロックの殿堂入りを果たしています。
受賞した際トムは「ロックの殿堂はここ数年で民主的になった」と語っています。
変態的ギタープレイ
トムのギタープレイは、変態的独創的な発想によりトリッキーな奏法が多く使用されています。発端はギターミュージックが古いと批評され、DJが流行だった1980年代後半、ギターでもDJはできる!とギターでスクラッチ奏法を始めたのがきっかけとなります。
ヴァンヘイレンを好んでいたということもあり、アームやスイッチング奏法も日常的に使用していたこともきっかけだと思われます。
ワウペダル、ワーミー、ディレイ、トレモロなどのエフェクターを活用した奏法も多彩で、スライドバー、六角レンチなどの小道具を使用したり、ギターからシールドを抜いて掌に押し当てノイズを出しワウを使用し効果音を出す。トムの領域に来ればギターは必要ないかもです...。
【画像引用元:https://www.fender.com/ja-JP/tom-morello】
変態的なギターサウンドが持ち味のトムですが、ヘヴィなリフやメロディアスなソロなどもこなすギタープレイヤーなんです。大学時代にはボストンまで足を運び、当時EXTREMEでプレイしていたヌーノ・ベッテンコートのプレイを参考にしていたそうです。
実は速弾きも得意なマルチプレイヤーなのです。B‘zの曲を初見で弾けるなんて噂もあったくらいです…。
ARM THE HOMELESS
トムが使用しているギターは、長年メイン機としています。水色のボディに「ARM THE HOMELESS」とトムの政治的メッセージが書かれ、ポップなカバの絵が描かれたクレイマー社のストラト型に似たギターです。Ibanez製のロック式トレモロEdgeにEMG製ピックアップ85&81を搭載し、ネックはグラファイト製となっています。操作系は2V1Tにトグルスイッチ(キルスイッチとして使用)とシンプルです。秘書時代に貯めたお金で購入したと語っており、何度も自身でカスタムを施したため、手に入れた当初とは全く違うギターになっているようです。トムが参加したCDアルバム21枚全てにこのギターは使用されているようです。
レイジ時代にはFender製のテレキャスやIbanez製のセミアコを使用しています。基本的にノーマルで使用することはなく、カスタムやペイント等が施されています。
オーディオスレイブ時代はフェンダー製のストラトキャスターをカスタムしたものをメイン機とし、レイジ時代のサウンドと差別化を図ったみたいです。このモデルはFender社からトム・モレロ シグネイチャーモデルとして販売されています。
他にもSG、ダブルネック、レスポールを使用しており、楽曲によりアコギやガットギターをも使用しています。
バドワイザーのプロモ―ションで使用され、バドワイザーのロゴがペイントされていたが何故か、燃やしてバドワイザーを消しスチールたわしで削ったそうです。たしかトムはハイネケン派だったような...それが関係あるのかも。
三種の神器
足元に必ずセッティングしてある「ワウ」「ワーミー」「ディレイ」はレイジ時代から長年使用されています。グライコとトレモロも使用頻度が高く、多くのライブで使用されています。
MXR Phase90/DID FX40b Equalize/BOSS DD-2 DD-3/Digitech Whammy/Cry BabyTBM95/BOSS TU-2/Digitech Whammy300
ディレイを2つ組わせていますが、1つの時はBOSS TR-2が配置されます。
現在MXRからトムのスタックアンプのサウンドをエミュレートしたエフェクターが発売されています。アンプのプリアンプステージを再現し、JCM800のコントロール部を再現しているため同じセッティングの再現が可能です。
また、JimDunlopからはシグネチャーワウTBM95が発売されています。
レンジは広くリードでもカッティングでも対応できる幅広い可能性を秘めたワウとなっています。
エフェクターは全てトム自身で操作し、足元に配置しています。
アンプはMarshall JCM800をレイジ時代から使用しており、アンプのみで歪を作っています。キャビネットはPeavey製を使用し、前面に革命家チェ・ゲバラが描かれています。
他にはJC-120やVOXのアンプを使用しています。メイン機材はアナログの物が多いですが、セッティングや、小道具、奏法を駆使してトム独自のサウンドを生み出しています。
活動家トム・モレロ
レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのメンバーのケガや、病気治療などによりツアー中止などにより不定期な活動になり、映画監督でもあるブール・ライリーとストリート・スウィーパー・ソシアル・クラブというグループを作っていましたがグループ事態での活動は少なく現在は活動休止状態です。トムは現在ソロ活動を中心に行っており、ナイトウォッチマンとしてソロアルバムを制作したり、他のアーティストのサポートや、コラボを行っています。2023年8月にはBABYMETALの新曲「メタり!!」でfeat.Tom Morelloとして参加しておりメタルなサウンドの中にもトムの独創的なギターソロを斬新な楽曲に彩りつけています。
【画像引用元:https://rollingstonejapan.com/articles/detail/39899】
社会派政治活動にも積極的なトムは様々な活動にも参加し、多数のメディアにも露出しています。そしてインタビューでは「権力に対して批判的でないってことは、権力に黙って従っているってこと。俺のiPodにノリノリな曲がたくさん入ってないとは言わないし、もちろんそんな曲が必要な時もある。でも俺は、自分が作る音楽で発信するメッセージとその行動を意識することの大切さも知ってるんだ」
と語っています。近年の若手アーティストたちが自分の知らないうちに政治的利用されていることや、アーティストとファンとの間に相違的な理想が大きくなっていると警告しています。
変化の激しい現代でもトムは音楽と社会について日々考え続け新しい「モノ」を生み出さそうとしています。